憲法って何。
麻生元総理の発言が問題になっている。たしかに大問題であり、野党の追及はこれから勢いをますと思われる。
ワイマール憲法については、ご存じの方が多いかと思う。この憲法は、たしか社会権を盛り込んだ世界で初めての憲法である。社会権というのは生存権を代表とする国家にたいして何らかのことを請求する権利である。別名、国家への自由と呼ばれる。これは、国家からの自由をその内容とする自由権とは、その性質を異にする。
教育を受ける権利なども、社会権の一つである。ワイマール憲法下のドイツは、経済的な不況に陥り、雇用も悪化し、先の見えない時代だった。そこにカリスマ的指導者であるヒットラーが現れ、その独特の甲高い声の演説が人々の心を鷲掴みにした。
ヒットラーは、知らない間に憲法を変えたのではなく、全権委任法を成立させ、憲法の解釈を変えた。大衆の大きな期待の中。
正式な手続きを踏んだのである。ドイツ人が戦後の責任論を語るとき、国民がヒットラーを生み出してしまったという事実を良く認識している。だから、その償いも国民の総意の下、国を挙げて行っている。
ドイツでは戦う民主主義という言葉がある。民主主義の下では、あらゆる政党や、言論が保障されるべきである。しかし、ナチスを支援するような政党は今でも禁じられている。
世界で最初に社会権を謳ったワイマール憲法が、あったにも関わらず何故、そのようなことになってしまったのか。
どんなに理想的な憲法があっても、国民の暮らしが全く良くならなかったからである。憲法には、素晴らしいことが書いてあったが、では実際に国に対して自分たちの暮らしを良くしてほしいと請求できたのか。
ワイマール憲法の中の権利は、そのほとんどが書いてはあるが実際には実現できないプログラム規定と呼ばれている。全く実効性がないものとされていた。
このような時代背景の下、ヒットラーが現れ、戦争へと突き進んでいく。
もう10年ほど前になるかもしれない。『憲法って何』ということで、憲法の勉強会を一年位かけてやっていた頃がある。
時は、小泉首相の全盛期であり、首相公選制の議論がなされていた。
その甲高い声、独特の国民に向けてのメッセージは、ふと誰かを匂わせる。
当時も首相公選制を導入するためには憲法を変えなければならない、そんな議論がなされていた。
私は、ちょっとした危険性を感じ、まず憲法を変えることよりも憲法に何が書かれているか、知ることが先だろうということで、そのような勉強会を開いた。