会派視察

10月22日、23日、24日と三重県尾鷲市和歌山県新宮市海南市と視察に行った。

三重県尾鷲市

尾鷲市では健康保険による脳ドックと、土砂災害情報相互システムについて視察を行った。少子高齢化により医療費が高騰する中、医療費の抑制は国、地方自治体の大きな課題であり、東松山市も例外ではない。そこで、がんについで死亡原因の上位である脳卒中脳梗塞の早期発見につながる脳ドックを健康保険で実施している尾鷲市を視察地として選定した。また、土砂災害情報相互システムについては、危機管理について最先端を行く都市であるということで選定した。

(1) 国保による簡易脳ドック
①概要
 国民健康保険による簡易脳ドックについて。MRという検査機器を使い、脳の血管の様子を調べることにより、脳梗塞くも膜下出血等の病気を早期に発見することを目的として、11月から3月の間、毎年脳ドックを行う。受診者には、受診結果により脳卒中予防教室などを案内する。
 受診資格は、35歳以上の尾鷲国民健康保険に加入している方を対象にしているが、後期高齢者は対象外。定員は130名で、自己負担額は6900円。

②実施の背景
 県下でも4位という市民一人当たりの医療費であり、医療費の抑制が課題となっていた。特に若年者の脳疾患による患者が多い地域であり、その原因を分析するため市民を対象にグループインタビューをした結果、特殊事情として刺身を食べる時に、裏表に醤油をたっぷりと付けて食べる習慣があり、さらに漁師まちであることもあり、毎晩晩酌する人が多いということが分かった。そこで生活習慣の見直し、保健師による指導と、早期に重大疾患につながる脳梗塞脳卒中の予防が必要となった。
今でも残る台風12号の傷跡。死者12名、行方不明者1名。この場所で死者が。最先端のシステムの防災対策本部。壁には過去の災害の写真が。移動中継システム搭載防災車両

(2) 土砂災害情報相互通報システム
① 概要
尾鷲市は、これまで三重県と津気象台が連携し配信する土砂災害警戒情報を防災無線・防災メール・防災総合電話サービスにより配信してきた。しかし、防災無線では遮音性の高い住宅や、暴風雨の時など聞こえないなどの問題点があったため、防災無線のデジタル化が義務付けられる前に、公共通信インフラに依存しない専用の災害通信ネットワークを用いて、音声や映像を相互に通信できるシステムを構築した。その内容としては土砂災害警戒情報・J-ALERTの統合とIP電話の連携によるきめ細やかな情報伝達、孤立化が想定される集落の避難所や重要施設・防災関連施設を無線FWAネットワーク(高速・大容量伝送システム、動画伝送も可能)で接続、無線FWAネットワークを利用したIP電話システム(文字情報機能付き電話端末に情報一斉送信可能)、土砂災害の発生状況をネットワークカメラで確認。
② 背景
   背景として、背後を山に囲まれ海に面する尾鷲市は、台風による土砂災     
   害、地震による津波等の災害に襲われてきた歴史を持つ。市街地に8割人口が集中しているが、リアス式海岸に漁村集落が点在しており、震災時には孤立化が予想される。また地震時の最大津波被害想定は、10メートルを超え、到達までの時間は10分程度ということで、限られた時間での迅速な避難が必要となる。さらに雨の多い地域であり、台風、洪水による甚大な被害も多い地域である。このような背景のもと、正確な情報を確実に伝える手段が必要となり、日本で最先端の防災危機管理システムを構築するに至った。
 ③ 感想
   このシステムを見に全国から視察団が来るという。最先端のシステムであり、国、県レベルでも参考になることが多いと思われる。設置費用は4000万円、さらにこれから1億6千万円をかけてエリアワンセグ送信局を設置、戸別に受信端末を配布するという。2億円という額が高いかどうかだが、この地域には津波から町を守るスーパー堤防も何もない。たとえ何百億円をかけてスーパー堤防を造ったとしても、自然の猛威の前に多少の減災効果はあるものの、ほとんど役に立たないことが311の大震災により証明されてしまった。それを考えると、2億円という額は費用対効果からして、非常に効果的なシステムだと思われる。