東松山市環境基本計画市民策定委員会主催。『降りてゆく生き方』自主

プロデューサーの高橋さんと、悪役市長役の役者さん。
東松山市環境基本計画市民策定委員会主催により、映画『降りてゆく生き方』が自主上映された。主演、武田鉄也。内容は、町の開発をめぐる、その利害者と住民の葛藤。なぜか、遠い町や、映画の話とは思えない。おそらく、日本全国で普通に起きていることだからであろう。町が豊かになるためには、森を切り開き、開発をしなければならない。少子高齢化社会を迎えて、先立つのは金だ。そこは誰もがわかっている。

 しかし、森を切り開けば、そこにすむ生き物は行き場を失う。映画では、熊の生息地であった。東松山市には熊は居ないと思うが、オオタカの営巣がある。開発で失った自然を元に戻すのは大変だ。不可能に近い。この映画は、単なる環境保護を目的とした映画ではないようだ。

 環境問題をテーマにしているが、さらにメッセージがある。開発を進める市長と、それをに対抗する新人候補との選挙が描かれている。小学校の教師をやめ、自然を守るため、立ち上がる。その動機は、子ども達が起こしたアクションである。子どもたちが純粋な気持ちで熊の住む森を守る運動をする。まわりの大人には『女、子どものやること』と馬鹿にされる。しかし、その輪は広がり、最終的には新人が勝つ。決して、強くない、大きくない、小さく、弱いところから始まった改革である。子どもたちの純粋な思いは自然に広がる。実際にあった話を題材にしている。だから共感を呼ぶのだろう。

 また映画の中のキーワードは『腐敗と発酵』である。腐敗と発酵は同じものである。しかし、人にとって良いものは発酵であり、よくないものは腐敗である。納豆は腐敗ではなく、発酵である。ヨーグルトも腐敗によりできているとは言わない。全編をとおして、このキーワードが貫かれていた。腐敗しそうなところをどう発酵させるか、それがテーマだ。発酵することで、生き生き、わくわくする。そこに人が集まる、それが町づくりだ。

 映画の後、プロデューサーの高橋さん、悪役市長役の役者さんを交えての意見交換会。高橋さんの話も非常に面白かった。市民の意見も聞けた。娘さんが、精神疾患になり、その経験を語ってくださった方の話は、涙なくては聞けない。しかし、その方は、いつも笑顔を忘れない。すばらしい話であった。他にも、たくさんの市民の方が熱い思いを語っていた。まだ、『この街も、大丈夫かな』、そんな気がした。熱い思いも一人で、心の中で思っているだけでは、いつか冷めて、それが単なる愚痴となってしまう。一歩行動を起こすことで、思わぬ輪が広がることがある。

 どんな大きなことも、最初は一人の勇気ある人が行動することで始まった。その輪がどこまで広がるかは分からない。広がりの大きさは、その熱意と、やはり共感を呼ぶことが必要だ。大変、勉強になった。次の予定があったので、懇親会には出ることはできなかった。